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2012年5月15日
空虚なGDP4.1%成長。早期の非正規社員雇用制度撤廃
内閣府が5月17日発表した2012年1~3月期の国内総生産(GDP)は、前期(2011年10~12月期)比1.0%増、年率ベースでは4.1%増となった。プラス成長は11年7~9月期以来、3四半期連続となる。要因は、個人消費が堅調、公共投資の増加、輸出の改善があったためとされる。だが、個人消費は、エコカー補助金復活によるところが大きく、公共投資は東日本大震災の復興事業であり、輸出は海外経済の持ち直しを背景とするもので、「政策頼み」、「海外経済頼み」がその内実である。また、経済成長のエンジンと云うべき設備投資は、前期比3.9%減と低迷している。

エコカー補助金は、好調な新車販売の動きを受け、早ければ7月末に予算切れで打ち切られる可能性が高く、補助金終了後の大きな反動が懸念される。ちなみに、12年4月の国内新車販売台数は35万9631台で、前年同月比約2倍の93.7%増となった。昨年が東日本大震災の影響で低水準であったとは云え、エコカー補助金の効果が大きく表れた。また、海外経済頼みの輸出についても、構造的な問題が顕在化してきた。新興国企業の製造レベルの向上で良質の最終製品を安価に量産するようになり、日本企業の輸出競争力は失われつつあり、さらに、国内生産拠点での生産にこだわってきた付加価値の高い先端部材の海外移転により、日本からの先端部材の輸出の勢いもなくなりつつある。

そして、肝心の海外環境に暗雲が垂れ込める。欧州連合(EU)諸国の政変で雲行きが俄然怪しくなった。5月6日のフランス大統領選挙で、「反緊縮」を掲げた仏社会党のフランソワ・オランド氏が勝利し、同時にギリシャ総選挙でも、緊縮派の与党が過半数割れし、両国ともに反緊縮派が勝利する結果となった。両国で選挙が行われる前、EU諸国は「財政緊縮」の方向で足並みを揃えていただけに、今後のEUの動きは不透明となり、欧州債務問題の再燃懸念が世界経済に及ぼす影響は大きく、日本の輸出回復テンポは鈍くなると覚悟しなくてはならない。

しかるに、内需拡大を狙う「政策頼み」は、所詮、国民の負担になるわけで、国の財政が破綻状況にある今日、許される筈もないが、国に対して、企業は成長戦略を、国民は至れり尽くせりの福祉や医療を、公務員は民間ベースを上回る給与や天下り先の維持拡大を求める。45兆円しか歳入がないのに、90兆円の歳出をし、その差額は国債発行による借金で埋める。このような体たらくのやり方をバブル崩壊後20年も続ければ、国の借金がGDPの2倍に膨らむのは当り前だ。皆が甘えの構図に嵌まり込み、何でもかんでも国に求め、また、国を然るべき方向に牽引する政治家も、選挙がある故に、厳しいことは言わない。

現政権は、「税と社会保障の一体改革」を声高く言うが、その前に歳出カットを、それこそ政治生命をかけて断行すべきだ。国の運営は会社の経営と同じく、立て直すには経費削減が最も確実な方法だ。コストカットは予測が可能であり、収支均衡までコストカットを徹底すべきだ。収支均衡が見えたところで使途を明らかにし増税の考えを国民に問うべきだ。そのためには、民主主義とは、政府にすがりつくのではなく、個々人が自己責任を果たすことで成り立つ、ことを確認し合わねばならない。いつの間にか染み付いた、もたれあう気風の一掃が不可欠だ。

ならば、内需拡大は何を以て図るべきか。産業界が要求して法制化された非正規社員雇用制度を撤廃することだ。生活保護と変わらない年収の若者が急増し、若者の働き手の大半が非正規社員だ。経営し易いようにするためにつくられた制度だが、本当は、正規社員の給料に耐えて経営しなくてはならないのに、派遣社員に頼る風潮が生まれた。経営が安易な道を選らんだために、かって世界を制覇した電機メーカーの2012年3月期決算の軒並み総崩れに見る如く、日本の経営力は確実に弱体化した。韓国・台湾などの新興企業の高笑いが耳につく。「もはや、日本に学ぶものはない」、と。

企業は、非正規社員を正規社員にし、人材投資をしっかり行うことだ。企業に開発や改善改革のイノベーションをもたらすのは、人材だ。新規の需要を生み出し、海外新興企業に追い詰められた危機を打開するのはイノベーションしかない。一方で、正規社員となった若者は、生活設計が可能になり消費力を発揮し、個人消費の押し上げを果たすだろう。

第1、日本には人的資源しかないのだよ。それを疎かにして国の存続はありえない。冒頭のGDPのプラス成長は、中身のない空虚そのものだ。
以上

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