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2012年4月15日
解散価値にもならない日本企業株価。後進企業の後塵を拝する今様経営者大罪
東証1部上場の連結PBR(株価純資産倍率)は、昨年2011年8月5日に1倍割れとなって以来8ヵ月が経つ。つまり、市場での株式価値評価が企業の純資産より低い状態が続いている。平たく云えば、企業の市場価値が解散価値を下回り、日本企業は市場が求める収益力や成長力を持っておらず、「ニッポン株式会社は解散すべし」、と市場から宣言されている状態だ。まさに、資本主義の危機に瀕している。しかし、企業にカネがないわけではない。企業(非金融法人)は、余剰資金をたっぷりと持っている。企業は、1990年代のバブル崩壊を機にリストラを徹底し、その後、製造業への派遣が自由化され、コストの固定化を招く正規社員の採用には、あくまでも消極的であった。かつ、今日に至るまで20年の長きに及ぶ国内のデフレ地合いから、企業成長に不可欠な設備投資や開発投資を手控えたために、豊かな余剰資金が温存された。ちなみに、企業のカネ余りは2010年38.8兆円で、1990年代平均6.4兆円の6倍に達する。

しかるに、この20年、ことに21世紀に入って世界経済は大変化を遂げた。中国、インド、ロシア、ブラジルなどの人口大国を始めとする新興国市場の台頭と米欧日の先進経済国の地盤沈下だ。この大変化に、日本企業は全く対応しなかった。確かに、日本企業は、1985年の円独歩高をもたらしたプラザ合意を転機に20年前から、アジアへ本格的に進出して行った。だが、それは低賃金労働市場でモノを製造し、米欧日の先進市場国で売るためであった。設備は国内の工場から中古をもって来ればよいし、さしたる開発投資も新規に行うこともなく、まさに安上がりの生産拠点のシフト換えであった。その成果があって、製造企業は2002年から6年近く続いた「いざなぎ越え景気」では、毎年連続して過去最高益を満喫した。

企業は儲け、政府はいざなぎ越え景気と騒ぐが、国民はデフレの不況風をまともに受け、どこに景気があるのか、と訝った。定職のないフリーターが働き手の3分の1以上ともなれば、また、若者の大半が非正規社員となれば、購買力がつくはずもなく、結婚はムリで人口など増えるわけがない。これでは日本は衰退するしかない。従業員は、コストではあるが一方で消費者の側面を持つことを忘れてはならない。日本が高度成長期の頃、熾烈な競争を通じて、1億総中流の人々に選び抜かれた上質の製品を買う、消費者を自ら断ってしまってはどうにもならない。経済は、需要と供給の持ちつ持たれつ。この鉄則を外せば、見える先も見えなくなる。

そして、日本企業は、アジアで多くの現地労働者を雇用しながら、彼らが収入を得てやがて産み出す膨大な需要についての視点がなかった。人を使うだけ使って儲けを独り占めにし、現地の発展に目もくれない日本企業を尻目に、大規模のアジア市場向け設備投資を敢行し、マーケットを押さえたのは韓国、台湾だ。その技術は、彼らが独自に開発したものではなく、日本企業が確立した技術だ。開発リスクは、ただ乗りだが、しかし、新興市場を見据えて、大胆な工場建設を国内外の至る所で断行して世界に躍り出たのは、お見事と云うしかない。情けないのは、日本企業だ。あいも変わらず、これまでの先進国市場しか目にない、旧経営モデルを踏襲するだけのリスクなき経営に終始したため、巨大なアジアマーケットに投網を打つ千載一遇のチャンスを失ってしまった。

アジアなど新興国市場向けの開発・生産・販売の体制を構築するには、新規の開発・設備投資と人材投資が必要だが、デフレの日本には、その資金原資も人材資源もあり余るほど転がっていた。なかったのは、経営陣の急激に興隆するアジア市場を見る目とリスクを担う気概だった。チャンスを逸した企業の末路は残酷だ。海外後進企業の後塵を拝する日本企業に撤退が相次ぐ。韓国勢が、次世代デジタルテレビとして世界の注目を集めた有機ELテレビの技術はソニーが開発したものだ。逆転食らったソニーは、2012年3月期、5000億円の損失を出し、テレビ部門の縮小に追い込まれた。また、液晶テレビで一世を風靡したシャープは、2900億円の損失を余儀なくされ、09年秋、堺市に建設した最新鋭液晶パネル工場を運営する子会社の筆頭株主に、世界最大手の台湾・鴻海精密工業を迎えた。パナソニックもテレビの縮小に踏み切った。

今風の経営者は、先達が残した財に汲々とパラサイトし、言うことと云えば、「法人税減税」、では、まことにお寒い。先達が抱いた志しを持ち、中長期に展望を発する経営者は見当たらず、近年の20年間、常態化した新卒就職氷河の日本では、その先に見える凋落を歯止めする若手人材さえその層が薄く、心もとない。今風経営者の無為無策の罪は真に大きい。

おのれの安心安全を解脱し社会貢献に軸足を置かない限り、企業存続はない、ことを経営者は想い起すべきだ。
以上

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