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2012年2月29日
製造業弱体化は政府・日銀の怠慢にあり。円独歩高は為替戦争敗北
大手完成品メーカの国内生産見切りが相次ぐ。早くから海外に生産の機軸をおいた日産やホンダに続き、ついにあれほど国内生産にこだわったトヨタ自動車が、北米を全世界に向けた生産拠点とする方針を打ち出し、日本国内生産分の米国移転に着手した。子会社のトヨタ自動車九州が受け持つ海外向けスポーツ用多目的車「ハイランダー」の生産を2013年後半に打ち切り、米インデイアナ州に移すことを決定した。また、これまで国内調達を重視してきた部品の調達も海外部品メーカから行うことに切替えた。グループ企業や系列企業に檄を飛ばし、年々厳しいコスト削減を成し遂げてきたトヨタと云えども現下の歴史的な円高の下では、海外自動車メーカ勢との価格競争に対応することが出来ないからだ。為替問題は、一企業の力ではどうにもならない。

2011年の貿易収支が31年ぶりに赤字に転落したが、今年1月の貿易赤字も過去最大の1兆4750億円に膨らみ、今後の見通しも、超円高による企業の海外進出が加速し、かつ、原発事故の影響で火力発電に使う液化天然ガスの輸入が増大し、貿易赤字が定着する虞(おそれ)が出てきた。

世界貿易に占める日本の輸出シェアは、1985年の10%強が、2010年に5%と半分に低落した。新興国が台頭し、輸出を増大させたのだから、先進国・日本の輸出シェア低下は仕方があるまい、とする見方はあるが、しかし、その間、同じ先進国でもドイツは12%から8%強へ、米国は11% から8%強へと手堅い。ちなみに、中国は、2%弱から10%強へ、韓国は2%弱から3%にシェアを伸ばした。輸出シェアの低落は、まさしく製造業の体力の衰えによるものだ。だが、その衰えは、製造業自体が努力を怠った結果ではなく、国の無策によるものであるだけに、真に情けない。

日本の製造業は、常に円高と戦ってきた歴史がある。円高による価格競争力の低下に対し、日本の製造業は、一層のコスト削減や高付加価値化で凌いできた。そして、モノ造りで世界を制覇した日本が経済大国として認知された1985年9月、日本は米英独仏首脳とのプラザ合意で円高転換を呑まされた。以来、日本は為替による輸出ハンディを担わされ、輸出立国を標榜し長い年月をかけて構築してきたモノ造りを根幹とする産業構造を壊し、「脱工業化」と云うわけも分からない新たなる産業構造の構築を目指して迷走中だ。

そのような中で、日銀は2月14日の金融政策決定会合で、「デフレ」から抜け出すため、金融政策の目安となる物価上昇率の目途を「1%」と定め、合わせて金融機関への資金供給枠を10兆円増やし、追加の金融緩和を実施した。日銀の決定を政府や産業界もこぞって歓迎したが、すでに短期金利がほぼゼロの状態で物価水準を引上げることなど、金融政策で出来るわけがない。少子高齢化が進行する国内で内需の伸長が望めない今日、輸出を振興する以外に景気回復の道はない。通貨当局(政府・日銀)は、「為替レートは実需で決まる」、などと国民を欺かないで、米欧の金融担当首脳と「円高是正」のために、体を張って丁々発止の交渉をやらなくてはならない。サミットG8は、ご挨拶の場でない。

スイス国立銀行(SNB)は、過大評価されたスイスフラン高で国内の製造業が壊滅に追いやられるリスクがあるとして、1ユーロ=1.2スイスフランの上限を設定し、この水準以上は許容出来ないとして、無制限のユーロ買い・スイスフラン売りを行う準備があると表明した。スイスは、経常黒字かつ純債権国、健全財政国で優秀な輸出産業が多岐にあり、スイスフランは安全財産として買いを集める要因となっている。

米国は、製造業の復活によって経済成長と雇用創出を図るため、輸出拡大を睨み長期にわたるドル安政策を敢行した。サービス業だけでは飯が食えないと云うことだ。日本も然りだ。モノ造り業があってこそ、その上に載ってくるサービス業が成り立つ。米国は、海外に移転する企業に課税を強化する政策を追加した。また、米国は34年ぶりに原発2基の新設を認可した。米国は、常に意志の決定と実行が速い。製造業の動きが活発になり、生産増強の設備投資も始まった。

我が日本は、東北大震災後1年がたつのに、未だに瓦礫の処理はわずか5%しか進まない。原発は点検のため全面休止の状態で、再開見通しもなく、電力問題が重く産業界を覆う。その日本は、どこが欧米諸国に比し優れていると云うのか。円独歩高は、政権の外交能力の無さに起因する。製造業の衰退を招いた、政権の長は萬死に値する。
以上

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