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2012年2月15日
31年ぶり貿易赤字、無策の日本企業海外移転。進展する米製造業復活と米製造企業の国内回帰
マツダは、このほど海外生産を拡充するため2000億円規模の資本増強に乗り出した。今2012年3月期純損益は1000億円の巨額赤字を見込み、赤字計上が4期連続となる。トヨタ、ホンダ、日産などが海外生産比率を70% 以上に引き上げグローバル展開を果たしているのに、マツダは70%が国内生産であり、現下の「超円高」の直撃をもろに受けるところとなった。大赤字は時代の流れに取り残された結果であり、生き残るには海外生産へのシフトは当然のこと、と見る向きが圧倒的に多いだろうが、しかし、そう単純に考えてよいのだろうか。

財務省が発表した2011年の貿易統計では、輸出は前年比2.7%減の65兆5547億円、輸出額から輸入額を引いた貿易収支は2兆4927億円の赤字だった。自動車やデジタル家電を中心に輸出で稼いできた「貿易立国・日本」にとって、まさに異常事態の発生だ。東日本大震災によるサプライチェーン混乱がもたらした輸出減や原発代替のエネルギー資源輸入が主な原因とされるが、貿易赤字のかなりの部分は製造業が海外に出て行ったことに起因する。今日では、大手企業だけでなく中小企業が次々と生産拠点を海外に移転させる。

さらに、1月の輸出額は、前年同月比9.3%減の4兆5102億円、輸入は同9.8%増の5兆9852億円で、1月の貿易赤字は過去最大の1兆4750億円に膨らんだ。この赤字規模は、海外からの利子や配当などの所得収支の黒字を上回り、経常赤字になる見込みだ。これまで日本は、貿易収支と所得収支の二本柱で経常黒字を稼いできたが、巨額の貿易赤字が続くとなれば、経常赤字が定着する虞(おそれ)がある。「双子の赤子」と揶揄された米国の経常赤字と財政赤字の状態に、日本も陥ると云うわけだが、その状況は、基軸通貨の大国・米国と比肩できる筈もなく、個人金融資産を食い潰した後は、破綻国・ギリシャに似て悲惨なものになるしかあるまい。

冒頭のマツダは、海外生産拠点を増強した分、国内生産を減らし国内雇用を減ずるのは必至で、失業者の大量発生、地域経済の疲弊など益々経済を停滞させる諸問題を惹き起す。ただでさえ失業率の高い若者の失業がさらに増え、所得税も社会保険料も満足に払えない状況が生み出される。政府は税と社会保障の一体改革を唱えるが、そのようなジリ貧の絵を描くより、若者が溌溂と働き、結婚し子供をたくさん生み、安心して暮らせるために社会が求める負担をきちんと担える環境を整えるべきだ。

米オバマ大統領は就任の2009年早々、雇用拡大のために製造業の復活を目指し、壊滅状況にあったGMなどの自動車業界へ大胆な梃入れをし、かつ、ドル安による輸出振興を打ち出した。その後、住宅バブル崩壊の陰を引きずる家計部門の低迷を背景に、景気2番底の懸念が浮上するなど紆余曲折はあったが、2011年は、春先からのドル安進行を受けて輸出型製造企業を中心に生産活動が活発になり、設備投資も増加の動きをみせ、個人消費に大きな影響を及ぼす雇用の悪化に歯止めがかかり、米経済成長率が高まる展開となった。

ちなみに、製造業は、日本の東北大震災による2011年4月とタイ大洪水による2011年10月の特殊要因を除けば、生産は2009年7月から、実に31ヶ月間も継続して増加中だ。なかでも、公的な救済を受けた自動車の回復が著しく、自動車セクターが牽引する形で製造業の雇用者数は緩やかであるが増加している。米ビッグ3のGM、フォード、クライスラーの2011年12月期決算は、いずれも前期から大きく改善し、揃って黒字を確保した。経営破綻が相次いだ米国自動車企業の復活が鮮明となった。ことに,GMは、純利益が前年比62%増の76億ドル(約6000億円)に達し、旧GM時代を含めて過去最高益となり、また、2011年の世界販売台数は、トヨタを上回り、4年ぶりに世界トップに帰り咲いた。

1月24日の米議会で、オバマ大統領は一般教書演説に臨み、「持続的な経済成長に必要な青写真は米製造業から始まる」とし、多国籍企業や海外に拠点を移す企業に対する課税を強化し、海外での生産を国内に回帰させる政策を言明した。また一方、国内雇用を増やす製造企業を税制面で優遇し、また、工場の撤退などで打撃を受けた地域に進出する製造企業の工場新設や職業訓練に金融支援する方針を示し、米製造業の復活を雇用増に繋げる考えを強調した。そして、海外における輸出環境を構築するため、「太平洋国家」としてアジア重視の外交展開を改めて宣言した。TPPの方向づけに揺るぎはない。

翻って日本。米欧に仕掛けられた「超円高戦略」に絡め採られるように、海外にひたすら向かう企業の動きに何の歯止めもしない無策の政府と無責任に脱工業化を説く有識者達に問う。米国が強靭なる製造国家に復活したとき、果たして日本に存続の道はあるのか。
以上

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