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2012年1月31日
超円高、日本は最強か。怠るな、国内工場強化
果たして、現下の超円高は額面どおり受取ってよいのか。08年9月に発生したリーマン・ショックで住宅バブルがはじけて以降、米国は長期の経済低迷に入り、基軸通貨ドルの威信は地に落ちた。次いで、09年10月に発覚したギリシャの財政危機は、瞬く間にポルトガル、アイルランド、イタリア、スペインでも起こり、欧州連合(EU)の通貨ユーロは、急落し先行き不透明だ。そのような中で、「円」は、1ドル70円台、1ユーロ100円台の円独歩高をみせている。リーマンショック時の08年、「円」が1ドル103.4円、1ユーロ151.9円に比し、隔世の感だ。これでは、輸出企業が、ウオン安の韓国を初め海外企業との価格競争で不利になるのは当然で、また、輸出代金のドルやユーロを円転するとき目減りし、輸出企業の業績は苦しくなるばかりだ。

財務省が発表した2011年の貿易統計では、輸出は前年比2.7%減の65兆5547億円で、輸出額から輸入額を引いた貿易収支は2兆4927億円の赤字だった。貿易赤字の主な原因は、超円高に耐えかねて、日本の製造業が海外に生産拠点を移転させたからだ。直近でも、トヨタは今年、韓国向けのカムリの生産を米国での生産に切り替え、ソニーは、91年に世界で始めて実用化したリチウムイオン電池の組立工程をシンガポールと中国に移転し、国内1位のパナソニックも京都工場を閉め、中国の工場を増強する。また、三菱ケミカルは、日本メーカが主導して開発したブルーレイデイスクとDVDの自社生産から撤退し、台湾やインドのメーカに生産を委託することになった。そのほか、東芝は半導体3工場の閉鎖,TDKは7工場の閉鎖を決め,今3月期、赤字1000億円見通しのNECは、携帯電話事業等の不振により、1万人の削減を余儀なくされた。

1985年9月のプラザ合意による円高急伸に起因するバブル崩壊が、91年に始まるや否や、リストラの嵐が国内いたるところで吹き荒れ、倒産・規模縮小・業界再編の結果、ジャパン・アズ・ナンバーワンと云われた日本的経営(終身雇用・年功序列・企業内組合)は消滅した。しかし、その後、日本企業は、円安の追い風もあったが、基本的には国内生産拠点を基点とする欧米や新興国向けの輸出で企業体質を回復させ、且つ強化した。現下の超円高は、プラザ合意以来の猛烈な嵐を日本企業に叩きつけ、大手だけでなく中小の多くの企業が、日本を空っぽにして海外へ逃避する光景が止め処もなく繰り広げられる。行き先は、新興市場のアジアだ。そこで、日本から移転した技術で競争力をつけた韓国や中国と戦うと云うのだ。それは、良い。しかし、空洞化した日本における今後の製造業はどうなるのか。今回の円高は、日本の製造業そのものを消しかけない恐ろしさを秘めているのだ。

有識者やアナリストの多くは、製造業の時代は終わった、脱工業化の時代だ、といかにも小賢しいことを云う。ならば、製造業に代わる脱工業化の産業とは何か、と問えば、情報、医療、介護、観光など意味不明の戯言を云う。一時、彼らが金融大国と崇めた米国や英国は脱工業化社会なのか。無責任なことを云っちゃいけない。米国が今、ドル安を堅持しているのは、雇用拡大を目指して製造業の建て直しをするためだ。一方、蒸気機関車を発明し、歴史上はじめて産業革命を果たした英国は、植民地戦略で大英帝国を築き上げ、その挙句モノ造りを忘れてしまった現在、打開策に苦慮している。同じ欧州でも、EU危機を担うドイツは、伝統のマイスター制度を死守し、モノ造りの基盤強化に努めている。

そこで、冒頭の、超円高は本物か、である。円が世界最強の通貨であるとは、欧米の誰も考えていない。日本ですら、おかしいと思う見方が圧倒的だ。50年後、人口3割減。10人のなかで4人が65歳以上の老人、5人が15〜64歳の学生を含む現役世代、1人が14歳以下の子供。今は、1人の老人を2.8人で支えるが、1.3人で支えなくてはならない。このような老人国に向かうのに、今日でさえ、破綻的な国の債務、歳出の半分は国債発行による借金などの問題を解決できない政治では、いつ「円」が暴落してもおかしくはない。まして、貿易赤字が定着する見通しとなれば、である。

いつまで持つか分からない超円高に振り回されて海外逃避に走るのもやむを得ないが、しかし、より大事なのは高品質の製品を造るのに必要な開発と製造とのすり合わせが常時できる国内工場の地力を高めることだ。超円高から円安に振れるとき、そして円安による資源高騰などで日本が危機に陥ったとき、製造業が海外のかなたに消えてしまっては、日本は滅亡するしかないだろう。
以上

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