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2012年1月15日
巨額資金余剰、企業無策の証明。ついに韓国の後塵を拝したか、開発力
次世代テレビ提案競争の場となる世界最大の家電見本市(CES)が、1月10日、米ラスベガスで始まった。注目を集めたのは、韓国勢の高画質で薄い次世代技術「有機EL」の大型テレビだ。有機ELテレビは、液晶やプラズマに続く次世代のテレビとされ、高画質、薄さ、省電力を特徴とするが、コスト面や技術面で製品の大型化は進まなかった。そのなかで、サムスン電子とLG電子が発表した55型有機ELテレビの出現に会場はざわめいた。日本勢が、韓国勢に遅れを見せた瞬間である。

もとより有機ELテレビの技術は、ソニーが開発し、07年に世界で始めて11型のテレビを発売した実績を持つ。しかし、その売れ行きは芳しくなく3年後に撤退した。他の日本勢も研究をしたが、ついに製品化することはなかった。ソニーは新技術「クリスタルLED」を公開し、パナソニックは数年以内の有機ELテレビの発売を表明し、それぞれ巻き返しを図るが、後塵を拝した憾みは否めない。

韓国勢は、すでに液晶テレビで世界のトップシェアを押さえ、さらに、昨年第3四半期からスマートフォンの販売台数で世界トップシェアをアップル社から奪った。この韓国勢の勢いをウオン安による価格競争力のなせるワザと見る向きは今もあるが、韓国の開発力を侮ってはならない。

また、1月9日、世界の自動車メーカーが出展する米最大級の北米国際自動車ショーが始まり、今年の「北米カー・オブ・ザ・イヤー」の乗用車部門で、韓国・現代自動車の小型車「エラントラ」が選ばれた。3年ぶりの受賞だ。日本勢は、ベスト3にも残れなかった。ちなみに、日本勢は、マツダのスポーツ用多目的車がトラック部門で08年に受賞したのが最後だ。また、「エラントラ」は、米国消費者リポート誌の推奨商品の座を日本車から奪ったことでも話題となった。目下、北米市場において日本独壇場の小型乗用車分野でシェアを拡大中だ。一方、急速に自動車需要が伸びる中国、インドなどの新興国市場では、日本勢は、欧州系のブランド車の存在感になかなか追いつくことができないばかりか、片方で、急速に存在感を見せてきた韓国車に圧倒される局面が増えてきた。

日本企業は、生産戦略が極めて慎重で動きが鈍い。車の仕様も先進国向けのもので新興国向けではない。韓国企業は、巨大工場を次々と建設し、新興国向け仕様の車を大量生産し、新興国市場の成長の波に乗ってゆく。日韓の勢いに差がつくのは当然だ。販売の伸びにつれて、品質・性能も日本車と比肩する評価が定着して行く。そして、シェアダウンとともに、日本車の世界最強イメージは崩れつつある。日本市場では見かけることがないので実感はないが、現代自動車は着実にシェアを伸ばしている。

かって、エネルギッシュな製品開発と大胆な設備投資で欧米各企業に脅威を与えてきた日本企業のパワーは、どこへ消えたのか。政府が昨年末に公表した2010年度の国民経済計算によれば、企業部門(金融法人を除く)の貯蓄超過が続いている。企業部門の純貯蓄は1990年代の6.4兆円から2000年以降は23.9兆円と大幅に増加した。原因は、純固定資本形成(総固定資本形成から固定資本減耗を差し引いたもの)が、1990年代の24.2兆円から2000年以降は3.2兆円に縮小したからだ。つまり、企業には、カネはたっぷりあるのに、思い切った開発投資や設備投資をせず、縮こまっているからだ。1990年以前は、企業が成長を目指して、積極的に開発投資や設備投資に走り、借金まみれで頑張った時代とは真逆になってしまった。

しかも、2009年、2010年は、純固定資本形成がマイナスに転じ、今日では、過去に積上げた資本ストックが減少し、既存設備の維持さえできなくなり、国内における企業の生産能力は縮小し始めた。これでは、日本経済は衰退するしかない。しかるにかかる余剰資金の源泉は、国の低金利政策による利払いの減少や法人税優遇によるところもあるが、何よりリストラと正規社員からフリーターへの切り替えによる労働コストの引下げが大きい。人的資源の質量の下落が企業の将来に禍根を残すのは必定で、開発や設備投資を怠り、「コストカット」を「経営」と誤解した多くの今時の経営者が犯した罪は極めて大きい。

2000年に入って、円安・ゼロ金利の時代が長く続いたが、目覚しく台頭する新興国市場に狙いをつけた果敢なる経営戦略は、どこも打ち出さず、今、企業は無策のまま、円高に振り回される。企業に眠る巨額の余剰資金をいかに有効活用するか、経営者ができなければ、国がやるしかない。企業を変えなくては、国も企業もジリ貧あるのみだ。
以上

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